代表挨拶
Massage
誰も一人ぼっちにしない
子育てなどで孤独や不安を
感じている人の悩みを解消する
居場所作りを
大澤裕子インタビュー
私の世界はこどもと病院だけ。絶望的な孤独と不安で押しつぶされそうに……。娘の先天性心疾患で、長らく闘病子育てをしてきた大澤裕子さん。子育て、特に病児を持つ家族の孤独や不安を和らげるために何かできないかと考え、2022年12月に立ち上げたのがJapan居場所作りプロジェクトです。なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか、どんな活動なのか、話を聞きました。
娘の闘病生活で感じた
子育ての孤独を解消するため
地域の子育てサポート会立ち上げ
――Japan居場所作りプロジェクトを立ち上げた、そもそものきっかけは何ですか?
大澤 はじめての出産時に、娘が先天性心疾患を持って生まれてきたことがきっかけです。無事に生まれてきたものの、何度となく入院や手術が必要で、病院にかかりっきりになっていました。地方から上京してきたため、親にもあまり頼れず、相談できる友達もおらず、精神的に追い詰められ、孤独や不安でいっぱいになった経験があります。
また同じように病児を持つご家族も孤独や不安を抱えているのを知り、病児もその家族も何でも気軽に話せて、心を落ち着けるような居場所が必要だと感じていました。
――闘病生活で悩んでいる最中、助けになったものはありましたか?
大澤 子育て支援をしているNPOにはとても助けられました。一緒に遊んでくれたり、外出するお手伝いをしてくれたり。とっても気持ちがラクになりました。
娘は3歳までに主要な手術を終え、それなりに体調は安定していましたので、保育園を探していました。障害児を受け入れている保育園なら、預かってくれるかもしれないと思い、娘の状況を伝えて、一度見学させてほしいとお願いしたのですが、断られてしまったのです。
なぜ一度も会ってもいないのに断られてしまうのか?せめて見学だけでもさせてもらい、そこで話し合ってから断られるならまだしも、電話での門前払いにショックで、悔しくて悔しくてずっと泣き続けていました。
そこで「居場所がないなら自分で作ろう」と考え、「みんなを笑顔でつなぐ子育て家族サポート会」を立ち上げました。障害者こども向けのデイサービス施設にお願いして、場所を時々貸していただき、毎回20〜30人のこどもやその家族が集まるようになりました。6年間活動を行い、自分自身にとっても、子育てに悩みを持つ家族にとっても、よい居場所を提供することができました。
――病児を持つ家族のサポートのために、他に何か活動はしていましたか?
大澤 病児を持つ家族の中には会社員やパートの方が多く、「もうこれ以上、こどもの病気のために会社を休めない。やめるしかない」という悩みを持つ方がいました。私は個人事業主としてエステサロンの仕事をしていましたので、起業ができれば、時間の自由度は増え、病児の看病と仕事を両立できるのではないかと思い、病児家族の起業相談や起業サポートも行うようになりました。
また、病気と向き合うこどもたちとその家族のためのボランディア活動を行っている「ドナルド・マクドナルド・ハウス」で6年間、ハンドトリートメントをしながら話を聞くボランティアにも携わっていました。
自分の地域だけ良ければ
それでいいのか?
社会を変える活動に転換
――「子育て家族サポート会」を6年で活動に区切りをつけたのはなぜでしょうか?
大澤 自分にとっても地域にとっても、よい居場所だったと思います。でもこの会に来れない他の地域の人は、孤独や不安を抱えながら子育てをしています。一地域での活動も大切ですが、社会全体の意識を変えない限り、多くの人を助けることができないと限界を感じ始めたのです。
病児や病児を持つ家族がどれだけ大変かを、まずは世の中にしっかり伝えていかなくてはならないと思い、講演活動にも力を入れ始めました。でもある迷いがありました。それは、こんなに大変な状況であることは伝えられても、「じゃあどうしたらいいの?」という答えが、その当時の私にはなかったのです。もちろん大変な状況を伝えることだけでも意味があるとは思いますが、何か解決策も提案できるような活動にしたいと考え、「子育て家族サポート会」を休止し、新たに「Japan居場所作りプロジェクト」を立ち上げることにしました。
――Japan居場所作りプロジェクトはどんな活動をしているのでしょうか?
大澤 大きくわけて2つあります。1つは、居場所作りをする人を応援する活動です。いろいろな居場所作りをする人が増えれば、いろんな地域にいろんな居場所が増えて、助かる人が多いと思うのです。それは何も非営利の子育て専門支援団体だけでなくてもいい。何か趣味のサークルでもいい。何か子育てママのちょっとした集まりでいい。営利のオンラインサロンであってもいい。
大事なのはいろんな居場所があることです。地域に子育て支援団体があっても、そこだけになってしまうと、権力を持ちすぎてしまったり、会員数を増やすことばかりに目的が変わってしまったり、こどもや親の価値観や年齢が変化した時に対応できない問題もあります。
ですので私のこのプロジェクトでは、営利であろうと非営利であろうと、規模の大小に関わらず、居場所を作りたい人を応援しています。
――実際にすでに行っている活動はどんなものがありますか?
大澤 2023年5月に、東京都葛飾区で、地域での居場所作りの応援と横の連携を促すイベントを開催しました。24ブースの出展、約300人に参加していただきました。
また、これから居場所を作る人の参考になるように、すでになんらかの居場所を作っている人100人から話を聞いたインタビュー動画をYouTubeに掲載しています。見応えあるのでぜひ多くの方に見ていただきたいです。
居場所作りの応援という意味では、「人が集まる!仕事につながる!ランチ会の始め方・育て方」(つた書房)と「お茶会起業〜居場所を作れば人が集まる!」(みらいパブリッシング)という本も出版しています。起業よりの切り口ではありますが、ランチ会やお茶会も孤独や不安を和らげる居場所の1つになると考えています。
――非営利団体へのサポートもしているのでしょうか?
大澤 はい。最近では非営利団体の集客や宣伝のお手伝いもしています。非営利団体の場合、活動内容が素晴らしくても、宣伝や告知があまりうまくなく、人に伝わらないケースが多いと感じています。私の場合、非営利活動だけでなく、エステサロンや起業コンサルなど長年事業をしているノウハウもありますので、そうしたノウハウを非営利団体のサポートにも活かせると思います。
病院と地域と学校をつなぐ
かかりつけこども
コーディネーターの設置をめざす
――もう1つの活動は何ですか?
大澤 こどもの安心を広げる居場所作りです。その中でも特に実現したいのが、病院と地域と学校をつなぐ、かかりつけこどもコーディネーター(仮)の設置です。
さまざまな居場所が必要とはいえ、特に病児を持つ家族の負担は大きく、その負担を和らげる仕組みが必要だと感じています。その解決策=私なりの答えが、かかりつけこどもコーディネーターです。
病児を持つ家族の方ならよくわかると思いますが、いろんな方々が支援してくれるとはいえ、担当は毎回変わり、各々の専門家同士での情報共有や連携もないため、家族が毎回同じ説明を繰り返さなければなりません。でも横の連携がないことや、担当者の知識レベルにバラツキがあるため、どれだけ伝えても、それやっちゃだめ!と伝えたことがされてしまうといった場面も出てきてしまいます。
そうしたことがないよう、医療・福祉・地域・行政・学校の専門家の横の連携を行う、かかりつけこどもコーディネーターのような存在がいれば、いろいろなこどもたちを社会が一体となって子育て・教育していけるのではないかと思っています。
――そんな存在がいたら、病児を持つ親の子育て負担は減りますよね。
大澤 病児なんて私には関係ないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。これから生まれてくるこどもが病気を持っているかもしれない。今は元気なこどもでも、ある日突然、難病や障害を患ってしまうこともあります。
病気がなかったとしても、こどもには一人ひとりさまざまな個性があります。その個性が社会全体で情報共有され、うまく連携できれば、よりよい子育てや教育ができるのではないかと思います。
こどもを理解するための
「こどものミカタ講座」を広めたい
――こどもの安心を広げる居場所作りのために、他にどんな活動を考えていますか?
大澤 こどもたちが何に困っているのかを知る「こどものミカタ講座」を専門職の方と作っています。この講座を世の中に広めていき、ゆるやかな認定制度のようにしていけたらよいと思っています。
まず大事なのはこどものことを理解すること。こどもがどんなことを考えて、何に困っているのか、こどもがいる・いないにかかわらず、社会全体が共有すべき知識だと思っています。この講座を世の中に広めていけば、こどもに理解のある大人が増えて、こどもが病気であろうと障害を持っていようと、いじめや親の問題があろうと、誰か手助けしてくれる人が現れるはずです。
その他では、2023年11月22日に第一回オンラインシンポジウム「こどもを取り巻く社会の課題とは?〜大人のできることってなに?〜」の開催を行いました。今後もさまざまなイベントや講座や講演などを通して、こどもの居場所作りに注力していきたいと思います。
――Japan居場所作りプロジェクトのお手伝いをしたい場合には、どうしたらよいですか?
大澤 現在フェイスブックで活動のサポートチームがグループがあり、興味がある方は加わっていただけるとうれしいです。また今は活動資金をクラウドファンディングした資金でまかなっていますが、今後も継続的な活動をするため、賛助会員のようなサポーターを募集する予定です。
Japan居場所作りプロジェクトが主催するリアルやオンラインのイベントや講座に参加していただければうれしく思います。また私自身の育児経験を伝える講演活動も行っていますので、お声がけください。
――Japan居場所作りプロジェクトがめざす理想の社会とは?
大澤 誰も一人ぼっちにならない、あったかい社会になることをめざしています。今の世の中には居場所がなく、孤独や不安で一人で悩んでいる方がとてもたくさんいます。そうした人が一人でも減り、生き生きと社会で暮らせるよう、微力ながらできることから一歩ずつしていきたいと思います。ぜひいろいろな形で協力や応援いただければうれしいです。